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女性におすすめの日本酒は?〈盃のあいだ〉

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

「女性におすすめの日本酒ってどんなのがありますか?」と訊かれることがあります。

一言では答えられない質問です。世の中には「女性向けの◯◯」「女子力が上がる◯◯」などのキャッチフレーズがあふれていますが、酒について言うとこれらはフィットしない表現です。酒の好き好きは個人によるもので、ジェンダーによるものではないからです。

主宰する日本酒イベント「町家でお酒を楽しむ会」で、こんなことがありました。ほとんどはじめて日本酒を飲むという20代の女性が一番気に入ったお酒が、竹鶴の熟成酒でした。「小笹屋竹鶴 無濾過 生酛 純米吟醸原酒 2008BY」、瓶熟成されたお酒です。

笑顔で「これなら私でも飲める、おいしい」とにこやかな表情が印象的でした。他の参加者の方も「こんな日本酒もあったんだ!」「甘くておいしい」と感激の声を上げていました。日本酒の初心者で女性の方に熟成古酒をすすめるということは思いつかなかったので、驚きました。同時に、自分がいかに固定観念にとらわれているかを実感したのです。

「女性だからこんな酒が受けるだろう」「女性にはこういうテイストの酒をすすめよう」という考えは、食べ物や飲み物の「嗜好」を捉えきれていないからこそ出てくるものです。

ジェンダーよりも個人による「嗜好」の違いのほうが本質的です。嗜好はジェンダーでくくられるものではありません、一人ひとりにそれぞれ嗜好があるのです。女性がみなピンクを大好きでないように、女性がみな好む日本酒は存在しません。個人の嗜好は誰であっても侵すことのできない領域ということも考えると、ジェンダーでくくることはかなり荒っぽい所作なのではないでしょうか。

嗜好はその人の食生活のバックグラウンドが大きく影響しています。普段どんな食べ物や飲み物を摂り、どんなものを好み、食生活についてどのように考えているか。さらには、どのような人生観を持っているか。こういったことを知った上でおすすめする日本酒を見つけてあげたいです。

その人を知った上で、ピッタリの日本酒をおすすめしたい。そして時には、思いもつかないようなサプライズのある日本酒をすすめることで、新しい世界を知ってもらったり、より進んだ対話をしたりしたい、と常日頃から思っています。

今日も日本酒コンシェルジュ通信に来てくれてありがとうございます。あなたを写す酒に乾杯!