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結局、「ひやおろし」って、何なの?〈盃のあいだ〉

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

残暑が去って、秋がやってきました。京都でも木々が色づきはじめています。

秋といえば「ひやおろし」。すっかり日本酒の季節商品として定着したひやおろしは、冬の搾りたてとともに日本酒の旬を感じる商品です。しかし、「旬」について思いを巡らすと、ひやおろしの本質は時期ではなく熟成ではないかと気づくのです。

冬に造られた酒がひと夏を越して飲み頃になったのが「ひやおろし」。出荷の時期が言葉の由来として示されています。

「ひやおろし」とは、江戸の昔、冬にしぼられた新酒が劣化しないよう春先に火入れ(加熱殺菌)した上で大桶に貯蔵し、ひと夏を超して外気と貯蔵庫の中の温度が同じくらいになった頃、2度目の加熱殺菌をしない「冷や」のまま、大桶から樽に「卸(おろ)して」出荷したことからこう呼ばれ、秋の酒として珍重されてきました。

日本名門酒会 お酒の歳時記【ひやおろし】

地方や蔵によっては、「秋上がり」という表現がひやおろしとほぼ同じ意味で使われています。

一般の酒造工場では、新酒は4月中に火入れも終わり、以降気温の上昇とともに熟成する。秋になり香味が整い味もまるくなり酒質が向上することを、秋上がりあるいは秋晴れするという

秋上がり(秋晴れ)・秋落ち | 灘の酒用語集

ひと夏熟成した結果、お酒がおいしくなるのが「秋上がり」ということですね。

搾った日本酒は、ひと夏熟成され味が整ったところで出荷する。その目安は外気と貯蔵庫の中の温度が同じくらいになった頃。これがひやおろし・秋上がりの意味するところです。

酒から食材全般に視点を移して「旬」をみると、その本質は「それがおいしい時期」であって、「時期が来たから旬」というわけではありません。初鰹を食べるのは粋だけど、もう少し待ったほうがおいしい鰹にありつけます。4月になったから、8月になったから鰹がおいしいのではなく、おいしいから旬なのです。その時期は地方によって違うし、その年の気候によっても違います。

だから、酒についても、「9月になったらひやおろし」ではなくて「酒が熟成しておいしくなったからひやおろし」なのです。ひやおろしの本質は時期ではなく熟成だと、僕は考えます。

きょうも日本酒コンシェルジュ通信に来ていただき、ありがとうございます。しっかり熟成したひやおろしに乾杯!