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燗はライブ〈盃のあいだ nº19〉

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

酒をめぐる旅、出雲編。取材の合間に日本酒処「こん吉堂」に立ち寄りました。おいしい燗酒で評判のお店です。この日は同じお酒をいろいろな温度で燗つけしてくれました。それぞれ違った味わいを楽しめます。そして、和らぎ水も燗酒と同じように温かい白湯という心遣い。

大将の今西さんは「燗はライブだ!」と言います。そのお酒がおいしく飲める温度でつけることはもちろん、どの料理と合わせているか、その時の気候、飲む人の状態、何軒目か、どのくらい酔っているか、体調はどうか。そういった環境をまるごと受け取って、どういうふうに燗をつけるか[1]を決めます。だから燗つけはライブで、即興作品なのです。

温度計は使いません。「数字に頼ると、数字に寄ってしまう」と大将は語ります。最適な燗つけの結果としての温度はあるけれども、その数字を目標にしてしまうとそれにとらわれてしまいます。目指すのは最適な燗酒の状態であって、数字ではないのです。

京都に戻り、行きつけの「カフェ・デ・コラソン」のマスターにこの事を話したところ、「それはかっこいいですね!」との反応が帰ってきました。ライブで燗をつける燗付け師、憧れる人がたくさんいるのではないでしょうか。

かつて「お燗番」という高度なプロフェッショナルが燗酒を付けていましたが、ライブ燗はさらにその先を歩んでいます。ソムリエやバリスタに憧れて職業を選ぶ人がいるように、「ライブ燗付け師」がもっと可視化されれば、「なりたい!」と思う人が増えて、おいしい燗酒が飲めるお店がどんどん増えていくのではないか。そんな話で盛り上がりました。

ライブ燗付け師を育成するとするならどういった教育が必要か? それは認知的徒弟制ではないかと考えます。なぜならライブ燗は知識で実現できるものではなく、その精神、スピリットが要だからです。おもてなしの心、一期一会の緊張感、状況を包括的に捉える力、即興のクリエイティビティー。これらライブ燗に必要な要素は、師匠の背中を見て、お客さんとの対話の場数を踏むことでこそ習得できるものだからです。

きょうも日本酒コンシェルジュ通信に来ていただき、ありがとうございます。ライブ燗に乾杯!


  1. 酒の温め方、ゆっくりと温めるか、一気に温めるかも使い分けます。 ↩︎