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自分の感性を相対化するグループ・テイスティング。2018年の日本酒テイスティングを振り返る〈盃のあいだ nº20〉

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

2018年は日本酒のテイスティングに取り組んだ年でした。今日は、ワークショップで積み重ねた「グループ・テイスティング」についてお話しします。

テイスティングに明け暮れた1年

今年に入ってから、日本酒の地域性を探るワークショップ「ローカル・サケ・キャノンボール」では130種類近く、その他でも200種類近くの日本酒をテイスティングしました。国内だけでなく、フランスや台湾、メキシコ、ブラジルでも清酒をきき酒することができました。また、どぶろくみりんなど清酒に近いお酒も幅広くテイスティングしました。まさに、多様なテイスティングに明け暮れた1年でした。

グループ・テイスティング

なかでも、大きな収穫となった体験は「ローカル・サケ・キャノンボール」での「グループ・テイスティング」によるものでした。2017年10月に始めたテイスティングのワークショップを積み重ね、ブラッシュアップした結果うまれたコンセプトです。のべ100人を超える参加者の協力のおかげです。この成果を国際学会で発表する機会にも恵まれ、多くの方にアドバイスをいただいたことが大きな助けとなりました。

「グループ・テイスティング」とは、同じお酒を複数の人でテイスティングし、感じたことを交換する行為です。わたしたちのワークショップでは、以下のようなプロセスで行っています。

  • 3分間、テイスティングします。その間、会話はもちろん、思ったことを声に出すことも禁止です。他の参加者に影響を与えないためです。自分ひとりで酒に向き合います
  • その後、テイスティングした内容を発表します。決められたボキャブラリーや表現はなく、自分の言葉で語ります。発表中、他の参加者は発言者を遮ったり、応答したり、会話したりしません。ただ聞きます。
  • 全員の発表が終わったあと、自由にその酒について議論します。

ファシリテーションをする際に心がけていることは、参加者が自分の感覚に自信を持てるようにすること、他者の感覚を受容し尊重できるようにすること、です。参加者は一般消費者から飲食店やメーカーの方まで、多彩です。そのなかでフラットでバリアフリーなワークショップにするよう心がけています。

通常、グループ・テイスティングを5本の酒で終えると、とても疲れます。頭を酷使する行為です。でも、そのぶん爽快感と充足感が得られます。

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自分の感性を相対化する

感性は人によって違うし、心に届く表現はその人の生きざまに裏打ちされています。他者のテイスティングコメントに耳を傾けることは、他者を受容し理解することにほかなりません。他者の感性を感じ受け止めることが、ついには相互理解につながるのではないか、と考えます。

同じ酒を違う角度から見ることや自分にはない表現を知ることはもちろん、他者の感性を捉えることが本質なのです。こうすることではじめて、自分の中だけで完結していた自分の感性を客観的に捉えることができます。それにより他者の感性と自分の感性が相対化するのです。ここで自己、他者との関係性の認識について質的変化が生まれるのではないでしょうか。これこそが、食を通したコミュニケーションの真髄なのかもしれません。

きょうも日本酒コンシェルジュ通信に来ていただき、ありがとうございます。あなたの感性に乾杯!