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未来を感じるボタニカル・サケ「WAKAZE FONIA TEA prototype 〜SOUR & MASALA〜 recipe no.009」レビュー

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

「その他」に秘められた可能性

「その他の醸造酒」。日本酒(清酒)でもない、ビールでもない、ワイン(果実酒)でもない、発泡酒でもない、穀物などを発酵させて造る醸造酒の中で「その他」に分類されるお酒です。

「その他」は多様性の源です。イノベーションの可能性を秘めています。醸造酒の分類の定義は法律によるもの。定められたのはたかだか100年ちょっと前[1]のことです。

果物や穀物を発酵させて酒を造ることは、古来から行われてきました。ぶどうを使ったワインは8000年くらい[2]の、米で造る日本の酒は1500年前くらいの歴史があります。醸造酒は人類とともに歩んできたアルコール飲料なのです。

発酵の多様性は、人間の分類を凌駕します。「穀物の醸造酒は多様で、その原料、製法は幅広い」とWAKAZE杜氏の今井さんは語ります。日本酒の免許が事実上新規発行されない現状の中で、どぶろくや副原料を使った酒を醸造することになったが、結果的に醸造酒・発酵の多様性に目を向けることになったといいます。

この話、もっと知りたい方は、今井さんのMediumをご覧ください。

ユニバーサルな魅力を感じた

三軒茶屋にあるWAKAZE醸造所に併設のWhimでどぶろくを飲んでいるときにたまたまであったのが、「FONIA TEA prototype 〜SOUR & MASALA〜 recipe no.009」。副原料に紅茶とスパイスを使った酒です。

ワイングラスに注いだ姿は美しく、香りを楽しみ口に含むと「ピンとくる」感触を得ました。酒を飲んでこの感覚になることはあまりありません。

見た目にあったシャープな酸味、さまざまな香りがバランスよく織りなすさま、キレのよさと余韻の美しさ。様々な食生活のバックグラウンドを持ったひとに受け入れられる、ユニバーサルな魅力がある酒だと感じました。

冷やして飲むとシャープさと爽やかさが楽しめ、温めるとやわらかな味わいと香りがより楽しめます。

酸味と香りを活かすことで、料理との相性も抜群のお酒です。

多様性からの発展の可能性。ああ、未来を感じる!

「その他」の可能性を感じました。日本の酒は歴史と伝統がある分、自由な発展が起きにくくなっているのではないでしょうか。伝統は変化の連続だといいますが、一つの固定したコンセプトから自由になることは大変難しいことです。

日本酒の本流から近いところにいない酒[3]です。しかし、イノベーションは常に中央ではなく周辺から起こります。未来に日本酒の大きな発展があるとすれば、その萌芽となるかもしれないと思いました。

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テイスティングコメント

一言でいうと、キレと余韻が美しい酒。シャープな酸味が特徴的でキレがよい。その酸味と香りで柑橘果汁の印象。さわやかなカルダモンの香りと紅茶の収斂味。そして、見た目と香りだけで十分に楽しめる。長く楽しめるお酒。

冷やして

冷蔵庫から出したばかり、10度位の温度帯でテイスティング。

外観はきれいなピンク色にちょっと茶色が入っている。くすんだピンク。ロゼスパークリングワインを思わせる色調。

上立ち香にスパイスと紅茶の香りがしっかり。爽やかな酸味を思わせる、それでいてスパイシーな香り。カルダモン・クローブ・シナモン・カモミール・ハーブティーの香り。

口に含むと、透明感のあるテクスチャー。強く、とてもシャープな酸味。爽やか。熟したレモンピールのよう。含み香にも紅茶の香り。カルダモン・ナツメグなどスパイシーな香り。収斂味が紅茶っぽい。余韻に紅茶・ナツメグ・レモン果汁・ライムのピール。

複雑に織りなす香りの調和が取れている。上品で、それぞれが主張しすぎない。紅茶のニュアンスは控えめ。

45度に温めて

ホットピンクレモネードになった。香りが上がり、酸味が少しやわらかくなったが、依然シャープさは残る。余韻の酸味が心地よい。

60度に温めて

余韻に香りがぐわっと広がる。酸味も広がる。シャープさは残るが、少しやわらかくなった感じ。余韻に少し収斂味、それがコクとなって現れる。

45度も60度も、それぞれよい。温めるとおいしい酒。

料理とのペアリング

かき揚げと合わせてみた。酒の酸味が強調されてよい。酸味が脂を切るというより、調和する感じ。カルダモンの香りと爽やかな収斂味が余韻に。料理の余韻と酒の余韻が競演する。

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(テイスティング日: 2019年2月24日)

ラベル情報

商品名FONIA TEA prototype 〜SOUR & MASALA〜 recipe no.009
醸造元WAKAZE 三軒茶屋醸造所(東京都世田谷区)
特定名称・種別その他の醸造酒
原材料副原料: 和紅茶(国産)、生姜、シナモン、クローブ、カルダモン、ピンクペッパー
酒造年度30BY
原料米つや姫(山形県産)、出羽燦々(山形県産)
精米歩合70%
酵母協会6号酵母
仕込み水-
アルコール度数13度
日本酒度-
酸度-
アミノ酸度-
製造年月30-12-10
杜氏-
その他情報醸造期間 H30/11/11〜12/6、上槽 12/7〜12/9
副原料: 和紅茶(国産)、生姜、シナモン、クローブ、カルダモン、ピンクペッパー
高温白麹酛二段仕込み/Botanical/Non-Filtered

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  1. 酒税が国を支えた時代|租税史料特別展示|税務大学校|国税庁検索 ↩︎

  2. 世界最古のワイン醸造痕跡見つかる ジョージア、8000年前 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News ↩︎

  3. 低アルコール、個性、食中酒としての機能、を見ると、世界のアルコール飲料のメインストリームにいます。 ↩︎