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3. 丁寧な言葉の積み重ねで日本酒の味わいを伝える|にしむら酒店 西村道隆さん インタビュー

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

(2015年5月公開)

具体的な言葉で、お酒の味わいを伝える

お店の中での西村さんを観察していると、とにかくお客さんと話す、じっくり話す方だということに気が付きました。そこで、西村さんが普段お客さんとどのようなお話をされているのかを聞きました。

— 普段お客さんへのお酒の説明はどのようにされていますか?

はじめて来店する人は、「あそこの酒屋さん、面白い酒がいろんなのあるよー」とか人に聞いたりしてくる人が多いですけど、もしかしたら、本人は何を飲んだらいいのかがさっぱり分かっていないのではないか。どういう味なのかがわかっていないのではないかと思います。

だから、ゆっくりとお酒の説明をしていくだけです。それで、ずーっと来てくれる人もいらっしゃる。一番最初に「ちょっと分からへんですけど、どういう酒が旨いんでしょうか?」という人にお酒のことを教えてあげて、それから「ハマる」というか、おいしさに目覚めてくれる人もいる。

お客さんにお酒の説明をする西村さん

— お客さんからはどんな質問があって、どんなふうに教えるのですか?

そうですね。一番お客さんから言われるのが多いのは「辛口」。いや、辛口のお酒なんか本当はないんですよ。甘さがあるかどうか。

甘いのが甘口、甘くないのが辛口。ただ、苦味とかアルコールのピリッと来るような刺激を辛いと感じるのはあるかもしれない。

アルコール度数とか、酸の強弱とか、全体のバランスとかは言えます。
でも、味は甘いとか辛いではなく、できる限り具体的に、「なにか」と言われたら「こういうのに近い香り」というふうに説明します。

たとえば甘みでもいろいろあります。山田錦というお米を使ったお酒ならパウダーシュガーのような甘み、雄町と追うお米を使ったものならばきびだんごみたいな甘み。

米の旨味はきびだんご系のちょっと黄色い穀物の味がちょっとあって、酸がこれくらいで、味のバランスはこんなで、飲んだらものすごくおいしいですよというふうに説明しています。

香りはバナナ系とか。フルーツでも木の実なのか、柿なのか、チェリーなのか、パイナップルなのかという香りの違いがあります。白ぶどうの香りが出る時もあります。
こんな風に、味、米の旨味、香りとか、なるべく具体的に伝えます。

西村さんが書いたコメント
滋賀県にある吉田酒造の熟成酒「純米大吟醸 竹生嶋 壺中重星霜(こちゅうせいそうをかさねる)」このお酒のラベルの文章は西村さんが書いています。西村さんは、このように具体的な言葉を使ってお客んさんに。丁寧な説明をしています。

— 西村さんが毎月配られている便り「一酒一会の会」でもこのような説明がありますね

便りでは、最初は蔵の説明から始めました。
そのあと、「うわあ、これあずきみたいな味するな」と思ったお酒があって、そのまま「あずき系のお豆を蒸したような味わいがほんのりあって…」などと書き始めたのが最初です。

そういうことを頭に入れて、このお酒を説明するにはどんなふうに言えばいいのかな、と書いて飲んでいくということをしています。

にしむら酒店の会報・便り「一酒一会の会」
にしむら酒店では「一酒一会の会」と題した便りを毎月発行し、お客さんに配っています。その月に入荷したお酒の説明がびっしりと書かれています