イベントレポート 日本酒レッスン その2「麹と日本酒」前編

その道のプロの方に日本酒の楽しみ方を教わる「日本酒レッスン」、2回目は北川本家で麹造りを担当されている西田僚さんを講師にお迎えしました。テーマは「麹と日本酒」です。

当日は雨天にもかかわらず15名の方にご参加いただきました。参加者の皆さんからは、「講師のアツい思いを感じました」「日本酒造りの大変さを改めて感じました」「造る方の生の声を聞くと、そのお酒に愛着がわきます」などのご感想をいただきました。

今回の日本酒レッスンは講師の西田さんのお話と実演のあと、参加者の方に麹づくりとテイスティングを体験していただき、日本酒と料理を楽しみながら交流するという流れで進みます。

北川本家 醸造部 麹担当 西田僚さん

講師の西田さんが酒造りをする株式会社北川本家は江戸時代に創業した360年近い歴史を誇る酒蔵です。「富翁(とみおう)」の銘柄で親しまれています。北川本家のある京都伏見は昔から水に恵まれていたことで酒造りが発達したとのことです。

西田さんが農業や生物、動物に興味を持っていたこと。専門学校でバイオテクノロジーを学び、酒蔵に就職するまでのこと、そして酒蔵に入ったあとしぼりたての酒を飲んだ時の驚き、そして酒蔵での仕事についてお話いただきました。

杜氏制度

西田さんが酒蔵に就職した頃は、昔の杜氏制度がまだ残っていたということです。杜氏制度の解説とともに、西田さんが一緒に働いた但馬杜氏の集団の方々との体験の数々を語っていただきました。情景が目に浮かぶようなリアルな語り口でした。

「杜氏の蔵人さんたちは職人気質で、なかなか物を教えてくれなかったけど、頑張っている時にはたまにいろいろなことを忠告してくださった。そんな時は少し認められたようで嬉しかったのを覚えています」と西田さん。

酒造り

つぎに、酒造りの基本を解説していただきました。ポイントは2つです。

一つは日本酒の発酵について。蒸し米のデンプンを米麹に含まれる酵素が糖に分解し、その糖を酵母がアルコールに分解するという流れです。

もう一つは仕込み。米と米麹、水を「三段仕込み」と呼ばれる方法で3回に分けて仕込み、約20日間かけてじっくり発酵させたものが醪(もろみ)。それを濾すと日本酒(清酒)になります。

麹づくり

酒造りの概要を理解したあとは、いよいよ今回のテーマ「麹」のつくり方に入ります。

一麹、二酛(もと)、三造り」と言わるように、麹づくりは酒造りの中で一番大事と西田さんは強調します。麹づくりの工程図をスライドに映しながら、麹室(こうじむろ)と呼ばれる麹をつくる部屋の中で、48時間かけて麹菌を繁殖させ, 米麹をつくる方法を解説していただきました。

麹菌は麹になりたいがために繁殖しているわけでなく、ただ自分がいきたいために繁殖している。人間はその働きを使わせてもらっているだけ」という西田さんの言葉が印象に残りました。

麹作り実演―「種付」

今回のハイライトは麹づくり体験。上の「麹作りの工程」の図にある「種付」の実演です。種付の工程では蒸米の上に麹菌をふりかけます。このあと米の上についた麹菌が繁殖しはじめます。

この瓶の中に麹菌がびっしり生えた米麹が入っています。

種麹の入った瓶をを振ると、かすかに麹菌が舞う様子が見られます。参加者の方にも実際に振っていただいて、その様子を体験していただきました。

麹作り実演―「麹箱」を使った「盛込」「仲仕事」「仕舞仕事」

つぎの実演は、種付が終わった蒸し米を「麹箱」と呼ばれる大きなトレーに入れていく作業です。麹の「盛込」という工程です。

麹づくりでは温度の管理がとても大切。麹菌が回っていく(麹菌が米の表面や内部に菌糸を伸ばしていく)過程で麹菌は自ら発熱します。山の形を少しづつ変えながら、表面積を大きくしたり小さくしたりして熱の発散を調整します。

西田さんは軽快な動作で、米の山を富士山のような形にしたり、そこに一重、二重の筋を入れたりしていきます。こうやって温度を調整し、意図するように麹菌の働きをコントロールするのです。山の形や筋の入れ方には伝統の知恵が詰まっていると西田さん。

参加者の方にも体験していただきました!米を広げたり山の形にしたりするのを楽しまれていました。

麹箱や麻の布など、実演で使った道具は実際に麹室で使われているものですが、米の方はプラスチックで作った「ダミー米」です。これがとてもよく出来ていて、見た感じや手にとった感じが本物のお米のようです。

麹の種類。総破精麹と突き破精麹

麹のレッスンの後半は、2つのタイプの麹、総破精麹(そうはぜこうじ)と突き破精麹(つきはぜこうじ)についての解説です。麹菌の繁殖のさせ方によってこの2つを作り分けます・

上の写真の米粒を見ると、透明な部分と白くなっている部分があります。白い部分が麹菌が回っている部分、つまり麹菌が繁殖している部分です。

「写真の左側の総破精麹は全体に麹菌が回っており、米を十分に溶かすので糖分やアミノ酸を引き出し、米の旨味の強い酒になりやすい」「右側の突き破精麹を使うと甘みや香りのきれいな酒になり、吟醸・大銀穣クラスの酒を作るときに使われる」と、西田さんの解説は進みます。

この2つのタイプの麹について学んだあとは、それぞれの麹を使った2種類の日本酒の飲み比べです。

イベントレポート、後編は麹違いのお酒の飲み比べと料理とお酒を楽しみながらの交流タイムです。

後編 ▶

撮影:aoi nkgw