/ 酒米の系譜

松山三井〈酒米の系譜・愛媛県〉

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

松山三井は酒造好適米ではありませんが、酒造りに使われる品種です。

愛媛県でのみ作られる米

愛媛県でのみ栽培され、検査数量(≒生産高)は606トン[1]です。
なお、愛媛県で作られる酒米はしずく媛(209トン)、山田錦(29トン)[1:1]となっています。愛媛県の酒造用の米の多くが松山三井なのです。

酒造りに向いた特徴

松山三井は大粒で砕けにくく、精米歩合を高くすることができます。よく削れるということです。また、たんぱく質含有量が少ないお米です。だから、淡麗辛口な酒に向いているとされています。

松山三井の系譜

旭や神力を祖先に持っています。

松山三井から突然変異を作り出し、育成された酒米に「しずく媛」があります。

飯米としてトレンドから外れ衰退するが、その後酒造用米として脚光を浴びる

松山三井は1953(昭和28年)に育成されましたが、1970年代初めまで普及しませんでした。晩生の松山三井はミカンの収穫時期にバッティングしてしまうこと[2]などがその理由でした。

1970年代に入り農業の機械化が進むと、味がよく、機械を使った脱穀に適していた松山三井の作付面積が急増[2:1]します。機械化により、収穫時期の競合問題も解決されました。

しかし、1990年前後から米流通の自由化により全国的なシェアのあるブランド品種に人気が集まるようになります[2:2]。また、大粒の松山三井はブレンドもしにくいので敬遠されるようになりました。

味のトレンドの変化も影響しています。旨味と粘り、柔らかさが特徴のコシヒカリなどにそのシェアを奪われていくのです。

しかし、大粒でたんぱく質が少ないという特徴は、酒造りには良い条件です。山田錦よりもたんぱく質含有量が少なく、緩やかな吸水速度、大粒で砕けにくく精米しやすい[2:3]松山三井は酒造用米としての新たな人生を歩み始めたのです。

参考資料・文献


おすすめ日本酒の本

日本酒や酒米の勉強をするのに役に立った本をご紹介します。

日本酒の科学

ブルーバックスの『日本酒の科学』和田 美代子 (著), 高橋 俊成 (監修)

酒米はもちろん、日本酒の造り、微生物の働き、熟成など多岐にわたった内容です。科学的な根拠が示されているのでおすすめです。

新しい日本酒の味わい方

田崎真也さんの『No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方

たくさんの日本酒銘柄が原料米別に紹介されています。酒米の種類によってどのような日本酒が出来上がるかを知りたい方におすすめです。

酒米ハンドブック

こちらは最近改訂版が出た『酒米ハンドブック 改訂版』副島 顕子(著)。ハンドブックなので手軽に持ち歩けるサイズ。試飲会で新しい酒米に出会った時にさっと取り出せるのがいいですね。

酒米、酒米ではないけど酒造用によく使われている一般米が網羅、米の特徴はもちろん、系譜図と米の写真。これだけの米の写真を集めるには大変な努力を要したことでしょう。米の基礎知識のコラムも充実していてマストバイなハンドブックです。


  1. 平成28年産米の農産物検査結果 平成29年3月31日現在(速報値) ↩︎ ↩︎

  2. ある米品種の軌跡|愛媛県農林水産研究所 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎