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「ノーマ、世界を変える料理」映画レビュー

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

久々に映画を見ました。「ノーマ、世界を変える料理」。コペンハーゲンにある「ノーマ(Noma)」というレストランのシェフ、レネ・レゼピ(René Redzepi)さんをフィーチャーしたドキュメンタリーです。

料理界のエッジを走るレストラン

ノーマは「世界のベストレストラン50」で4度も1位の座を獲得したレストラン。地元の食材だけを使った新しい北欧料理を提供する、料理も店内もサービスも現代的なレストランです。

高級レストランなのにテーブルクロスがない、ウェイターは蝶ネクタイをしていないなど伝統にとらわれず、料理も昆虫食や分子ガストロノミーの影響を受けたものなど、エッジを走るレストラン。

なによりノーマが際立っているのが、「料理を通して社会的メッセージを伝えている」こと。地元北欧の食材のみを使うなどテロワールを強く打ち出し、サステナビリティを意識したコンセプトが看板だという点です。

多様性を拾い出す批評システム「世界のベストレストラン50」

ノーマがトップの座に君臨した「世界のベストレストラン50」は料理人やジャーナリスト、一般の美食家などの投票によってベストレストランを選ぶ仕組みです。

長らく料理の世界での批評を支えてきたミシュランガイドとは対照的な立場をとっています。

ミシュランガイドはタイヤ会社が「お客さんに自動車で地方に行って地方料理を発見する旅をしてもらう」ために作ったガイド本です。パリの中心部にある最高級レストランも、寂れた田舎にあるレストランも同じ基準、絶対的な評価基準で評価するという立場です。これによりフランス料理の価値観を世界に広めることになりました。

その反面、その価値基準からはみ出た新しい波を捉えることができなかったという点も指摘されていました。対して、「世界のベストレストラン50」は投票という別のアプローチを取ることで、多様性のある料理を浮かび上がらせることができたのです。

ちなみに、ノーマはミシュランで二つ星をとっていますが、三つ星はまだです。

イメージとのギャップ、シェフのレネは生粋の生粋の料理人だった

映画を見る前は、最先端を走るおしゃれで近代的、未来的な料理をつくるのだから、ギークっぽい人に違いないと思っていましたが、実際は全然違いました。

走っている、駆け抜けている、熱い。頭のなかはインテリだけど、行動は職人そのものでした。

料理人は誰でも、ものすごい努力をしている」という彼の言葉、そして彼の行動、自ら設定した高い要求を決して諦めなずに達成すること、細部に信じられない程こだわる姿勢。全てにしびれました。

多様性の中で生きること

レネはイスラム教徒を父に持つマケドニアからの移民です。「人種差別はいつも受けている、ひどいことを言われたことは何度もある。でもそんなこと気にしない、それより自分の作った料理について言われる方が気になる」という内容のことを言う時の彼の表情が印象的でした。

デンマークという国は多様性を受け入れているからこそこのような才能が育つのか、いや違う、多様性が受け入れられていないけどその中で努力するから成功するんだ、と思いました。他の出演者が「レネはデンマーク人よりデンマーク人」と言っていましたが、その前には言葉に出来ない努力があったに違いありません。

情熱と努力。成功するのに必要なのはこれだ、と感じる映画でした。

(2016年5月22日)

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