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「不老泉」上原酒造の初呑み切りに行ってきました〈後編〉

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

木桶を使ったこだわりの酒造り

きき酒のあと、いなせやの丸山さんに蔵の中を案内していただきました。

上原酒造さんのこだわりの酒造りについては丸山さんからよく聞かされていましたが、蔵の中を見て改めて驚きました。いままで全国10ほどの酒蔵を見学しましたが、「えっ!?」と思うことが一番多かった酒蔵でした。

まず木の桶。「いまは桶を作れる職人さんがいなくて」という話は聞いたりしますが、こちらでは柿渋をたっぷり塗りこんだ仕込み桶やお米を蒸すときに使う巨大な桶も木で出来ています。

お米を蒸す木桶は、今は酒造りのシーズンではないため、このように収納されています。米を蒸すときは、甑(こしき)と呼ばれる巨大な蒸し器に、この巨大なせいろをのせます。家庭で米を蒸すのと同じ方法です。

木の桶は蒸米の出す水分を程よく吸い取ります。だから桶のエッジに水分がたまってベチャベチャにならないとのこと。お米の水分量をコントロールするというのは酒造りでとても大切なことなので、ここで差が出るとのことです。

精米機

これは「竪型精米機」と呼ばれる米を磨く機械。ゆっくりと24時間以上かけて酒米を精米します。一般には精米を外部に委託する、つまりすでに精米されたお米を購入することが多いです。精米というデリケートで手間のかかるな工程をプロに任せるという考えです。

上原酒造では、精米のあとの「枯らし」と呼ばれる水分量の調節などを含めて、全てコントロールするために自ら精米を行っているとのことです。

お酒を搾る「槽(ふね)」

次に案内していただいたのが、「槽(ふね)」のある部屋。槽とは、日本酒を搾る器具のことです。

日本酒は米を微生物の働きで発酵させて造ります。米が発酵してどろどろになった状態を「醪(もろみ)」といいます。これを濾したものが日本酒(清酒)で、残ったものが酒粕になります。

この、醪を液体の日本酒と酒粕に分ける工程を「搾り」あるいは「上槽」といいます。文字通り醪を「搾り」ます。現在ではほとんどの場合、「薮田」と呼ばれる機械を使います。

上原酒造では、機械を使わずに昔ながらの方法で搾ります。伝統的な器具、木製の「槽」の中に酒袋と呼ばれる袋に入れた醪を配置、ゆっくり日本酒が出てくるのを待ちます。その後テコの原理を使って圧をかけて搾り切ります。

この写真のように、大きな木の棒の先に重石を吊るして酒袋に入った醪を搾るのです。

ここが絞ったお酒が出てくる口、__「垂れ口」__です。日本酒のラベルに「垂れ口」という言葉が書かれていることを見かけたことがあると思います。これは、手絞りをして槽の垂れ口から出てきたお酒ということです。

醪を酒袋に一つ一つ入れ、ゆっくりと搾る。手間と時間がかかる、根気のいる作業です。昔ながらの槽しぼり。ほんとうに頭が下がります。出来たお酒は一滴一滴、味わって飲みたいです。

こうやって搾られたお酒は、タンクでじっくり熟成されます。

大好きな不老泉

大好きな不老泉が醸される酒蔵、上原酒造さんに訪問できて幸せでした。酒造りのシーズンではありませんでしたが、静かで、あらゆる場所が整然としている蔵の中を拝見して、丁寧でこだわりのある酒造りをされているに違いないと思いました。

上原酒造について

滋賀県高島市、琵琶湖の西岸にある歴史のある酒蔵です。主要銘柄の「不老泉」は蔵の敷地内にある井戸の名前だそうです。

上原酒造
〒520-1512
滋賀県高島市新旭町太田1524
http://furosen.com

謝辞

最後になりましたが、お誘いいただいた杜氏の横坂さん、蔵の皆さま、ご案内いただいたいなせやの丸山さん、一部の写真を撮ってくれたデザイナーのMocoさんに感謝の意を表明します。ありがとうございました!